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セパン公式テスト | クアルタラロのクラッシュと負傷、2日目の走行見送り…ヤマハ、3日間の一部始終

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フロントの空力デバイスはV4マシンらしい大型のものをテストしていた©Eri Ito
セパン公式テストでヤマハに起きた出来事は、外から見る以上に複雑だった。
ファビオ・クアルタラロのクラッシュと、2日目の走行見送りは直接の因果関係を持たない。
本記事では、5コーナーのクラッシュと1コーナーでのマシン停止、そしてヤマハの判断を切り分けながら、現地で取材した3日間を整理する。

2日目、ヤマハの決断と奔走

2026年のセパン公式テストのヤマハについて、まずは初日のファビオ・クアルタラロのクラッシュから順を追って説明したい。

ご存知の通り、ヤマハは2026年シーズンよりこれまでの直列4気筒エンジンからV型4気筒エンジンで戦うことを決めた。セパン公式テストは、2026年の「ヤマハのV4」を確認できる最初の公式の場となった。

クアルタラロは、1日目午前中の3回目のコースインでの走行中、5コーナーでクラッシュした。5コーナーは高速の左コーナーで、MotoGP.comの映像を確認すると、かなりのハイスピードでのクラッシュだったことがわかる。

クアルタラロはこの転倒により右手の中指を骨折した。

「かなり早い段階でフロントを失ったんだ。スピードもかなり高かったから、衝撃は大きかったし、何度もグラベルの中を転がった。その衝撃でちょっと意識が飛びかけたよ」

クアルタラロは、転倒についてこのように説明している。ヤマハとクアルタラロにとって幸運だったのは、彼らが2026年シーズンの開幕時点でコンセッションのランクDにあり、このため公式テスト前に行われた3日間のシェイクダウンテストにレギュラーライダーも参加できたことだろう。重要なアイテムについては、テストを終えることができていたという。

また、V4エンジンの経験がないクアルタラロだが、V4マシンへの適応について「完全に(適応できている)」と答えていた。彼についての懸念事項は、骨折した右手の指の状態ということになるだろう。クアルタラロは、2日目以降のテストには参加せず、ヨーロッパに戻って回復に努めている。

さて、ヤマハのV4マシンである。

クアルタラロは、初日午後にも走行を行った。このとき、1コーナーでマシンを止めている。これはクラッシュではない。「何らかの原因により」クアルタラロは1コーナーで「マシンを止めた」のだ。

2日目にヤマハは走行を見送ったが、その決断の背景には、初日午後の1コーナーで起こったことがあった。この日、ヤマハはどのライダーも走行を行わなかったために囲み取材が設けられず、ヤマハのマネジメント陣の囲み取材対応もなかった。このため、MotoGP.comのインタビューを引用したい。インタビュイーは、テクニカル・ディレクターのマッシモ・バルトリーニである。

バルトリーニは「昨日ファビオがコース上で停止したあと(※これは午後1コーナーでマシンを止めたことを指す)、何が問題だったのかを確認しました。しかし、明確な原因は特定できていません。いくつかの仮説はありますけどね」

「ただし、ライダーの安全――私たちのライダーだけでなく、他のライダーの安全も考慮した結果、再びコースに戻る前に、問題が何だったのかを本当に理解し、どのような対策を取るべきかを見極める必要があると判断しました。そのため、本日(2日目)は走行を行わないという決断をしました。引き続きチェックを続け、明日(3日目)に向けて原因の特定を進めています。今夜のうちに解決策が見つかり、明日は走行できることを期待しています」

バルトリーニによれば、日本のヤマハとイタリアを拠点とするヤマハ(ヤマハ・モーター・レーシング)に連絡を取りながら解決策を見出そうと奔走している、ということだった。

そして3日目、ヤマハはテストを再開した。これについてもMotoGP.comのインタビューを引用する。インタビュイーは、ヤマハ・モーター・レーシングのスポーツ・マネージャー、マイオ・メレガリである。

「日本とイタリアのヤマハにとって長い夜になりました。しかし、幸いなことに、エンジニアのおかげで原因を把握することができました。今朝(3日目の朝)、走行を再開できるという情報を受け取ったとき、みんな、とても安心しましたよ」

バルトリーニもメレガリも、2日目に走行を見送った原因については言及していないが、状況はおわかりいただけたのではないだろうか。

ここではっきりさせておきたいのは、クアルタラロが初日にクラッシュしたのは「午前中」であるということ。そして、ヤマハが2日目に走行を見送ったのは、初日「午後に」クアルタラロのマシンに起こった何らかの問題の原因を特定するためだった。つまり、クアルタラロのクラッシュは、2日目の走行見送りの原因とはつながってはいない、ということだ。

求められるトップスピードと次のエンジン

では、2026年セパンでのヤマハV4のポテンシャルはどうだろうか。

目に見える形での大きな変化といえば、フロントの空力デバイスだろう。2025年のテストや、テストライダーのアウグスト・フェルナンデスがワイルドカード参戦で走らせていたV4マシンは、まだ従来の直列4気筒のM1の空力デバイス形状だった。これが、ついに大きく変わった。また、サイドカウルの空力デバイスについても変化したものをテストしていた。

フロントの空力デバイスはV4マシンらしい大型のものをテストしていた©Eri Ito
サイドカウルの空力デバイスも形状の異なるものが登場©Eri Ito
テストライダーのマシン。さらに空力デバイスの形状が少し異なっている©Eri Ito
エキゾーストは2本しになった©Eri Ito

しかし、トップスピードについてはまだ大きく改善の余地がある。1日目のトップスピードを確認しても、ヤマハはクアルタラロとジャック・ミラーが記録した335.4km/hが最も速いトップスピードだった。この日のトップスピードにおける1番手は、KTMのエネア・バスティアニーニで、345.0km/hである。約10km/hの差があることがわかる。さらに3日目でもその状況はほとんど変わらなかった。ヤマハは、1日目も3日目も、トップスピードのランキングとしては最下位を独占していた。

こうした状況に、アレックス・リンスも初日の囲み取材で「まだパワーが足りない」とコメントしていた。それならばと、「エンジンに何らかの制限がかかっていたりはしますか?」と尋ねてみたが、「エンジン自体は最大限のところで回っている。ただ……どうやってなのかはわからないけど、そこからさらにパワーを見つけないといけないんだ」ということだった。

ただ、リンスによれば、今後、新しいエンジンが投入されるという。3日目の囲み取材では「タイに向けてエンジンが届く予定」とも語っており、アップデートが期待される。

セパン公式テストの状況は、ヤマハにとって厳しいシーズンのスタートのように見えるかもしれない。

しかし、そう考えるのは早急だろう。特に2日目の走行見送りについて、ジャック・ミラーが非常に端的かつ明快に説明してくれたので、3日目の彼の囲み取材のコメントを紹介したい。

「ちょっとしたつまずきだよ。でも、起きたことは仕方ない。9か月でバイクを作り上げて、世界最高の連中とレースをしようとしているんだから、昨日(2日目)みたいな一日が起きないと思うほうが、よっぽど甘いよ。まあ、想定内ってやつだよね」

「昨夜(2日目の夜)は、現地のスタッフだけじゃなくて、日本やヨーロッパ、あらゆる場所のスタッフが解決策を見つけるために本当に全力を尽くしてくれた。それで、今日またコースに戻ることができたんだ」

「さっきも言ったけど、こういうことをやっていれば、こうした出来事は避けられないものだ。それなら、ブリーラムのレース本番とかじゃなくて、今起きてくれたほうがずっといいよ」

筆者としてもまったく同感だ。ヤマハは今、新しい挑戦の真っ只中にいる。様々なトライ&エラーを繰り返して、改善と進歩がなされていく。そして何より、ヤマハはコンセッションのランクDを受けている。今季、レースをしながら存分にV4マシンを成熟させることができるだろう。


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