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インタビュー:ヤマハMS開発部長 鷲見崇宏さん|ヤマハ、現在進行形の進化と変化

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©Eri Ito
2025年シーズンも後半戦に入り、ヤマハの話題は「V4エンジン」に集まっている。
けれど、現場から聞こえてくるのは、新しいエンジンの検証だけでなく、リアグリップという根深い課題、そして日本とヨーロッパの融合という試行錯誤だった。
ヤマハは今、勝利を取り戻すための“変革のただ中”にある。

2026年にV4が走ればいい、というわけではない

シーズンも後半戦に入った今季、大きな注目を集めている一つがヤマハの「V4エンジン」だ。2024年9月にヤマハ・モーター・レーシングの元マネージング・ディレクター、リン・ジャービスがその開発を認めて以降、注目度は増すばかりである。

実際のところ、どのような状況なのだろうか。オーストリアGPの木曜日、ヤマハ発動機モーターサイクル車両開発本部MS統括部MS開発部長、ヤマハ・モーター・レーシング社長の鷲見崇宏さんにインタビューを行った。

「将来に向けた完全に新しい挑戦です。今シーズンを戦いながらまったく違うバイクを開発するというのは、今のMotoGPを見渡しても、過去を振り返ってもなかなかない、かなり大きな挑戦だと思っています」

「エンジンの形が違えば、それを支えるシャシーも、エアロの形状も周りの部品もすべて変わります。まったく別のバイクをつくっている、ということですからね」

「我々にとっては初めての挑戦ですから手探りの部分もありますが、テストは順調に進んでいます。ただ、『2026年にV4が走ればいい』というわけではありません。勝つための新しい道具として開発をしていますので、少なくとも今のマシンに対する優位性を確認できることが、最初の目的になります。今はまだ確信を持てるところまではいっておらず、来季に向けて、開発の佳境を迎えている状況です」

あくまでも、V4エンジンのバイクが、現行の並列4気筒エンジンを搭載したYZR-M1よりも優れている(あるいはそのポテンシャルがある)ことを確かめることが第一となる。ただ、いつかはV4エンジンか現行の並列4気筒エンジンかを選択することになる。そのめどについては明かせないということだった。

2027年には技術規則が変更され、エンジンの排気量が1000㏄から850㏄に引き下げられる。

「(2026年には)1000ccの最後のシーズンになる今、なぜ新しいエンジンを開発するのかというと、ご存知の通り、今季、我々はコンセッションのランクDを受けており、開発が優遇されている状態です。このチャンスをしっかり活用することが大事だと判断しました」

なお、2027年の850㏄エンジンについて、鷲見さんは「当然、検討はしている」と認めている。ただし、2027年に向けた850㏄の「エンジン形式」については「言えない」ということだった。

ここに、オーストリアGP金曜日の囲み取材でファビオ・クアルタラロが語ったコメントを加えたい。

「僕の見解として、聞いている限りでは、V4でレースをすることになるだろう。並列4気筒エンジンではあまりに差が大きすぎるし、そのバイクで思うような進化が得られていない。V4エンジンで走るのが楽しみだよ」

(なお、MotoGP.comによると、カタルーニャGP後に行われた月曜日のプライベートテストで、クアルタラロはV4マシンを走らせたと見られる。)

オーストリアGPは路面グリップの低いレッドブル・リンクにヤマハが大苦戦したレースウイークだったので、このコメントについてはそうした状況も加味して理解すべきだろう。ただ、オーストリアGPだけではなく、以前からクアルタラロがV4エンジンに期待を寄せていることは確かだ。

このインタビュー後、8月25日にはヤマハ・モーター・レーシングのマネージング・ディレクター、パオロ・パヴェジオさんが、SNS上でV4エンジンに関する大きな発表を行った。アウグスト・フェルナンデスが、第16戦サンマリノGPでV4エンジンのバイクによってワイルドカード参戦を目指すというものだ。

少なくとも、「V4エンジンの検証」は、実戦段階を迎えている。


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